新卒で営業の世界に飛び込んだとき、トップセールスになれば圧倒的な自信が手に入ると思っていました。周りにいる優秀な先輩たちを見て、「自分もいつかあんな風になりたい」と強く思い、トップを目指して全力で走り続けていました。「成功したい」その欲が自分を突き動かし、いつか全国で表彰されるような営業マンになれば、自信に満ち溢れるだろうと思ってました。
そして実際に全国表彰され、社内で1番の成績を収めることができたとき、自分がかつて夢見ていた「トップセールス」という場所にたどり着きました。しかし、意外なことに、想像していたほどの達成感や自信は感じられませんでした。それどころか、実績が上がれば上がるほど、自信が比例して上昇していないことに気づいたのです。
自信の二面性
昔の自分がびっくりするような、真逆の感覚が起きていることに戸惑いました。社内で1番になった時も「本当にすごい!」という感情はほとんど湧かず、むしろ「これでいいのだろうか?」という疑念が残ったのです。振り返ると、入社前の自分の方がむしろ自信に満ちていて、強気だった気がします。若さからくる勢いもあったと思いますが、実績が上がるにつれて、自分の中で「まだまだ大したことはないな」という感覚が増えていきました。
これは歳を重ねるにつれて、精神的に丸くなってきたという変化もあるかもしれません。しかし、実績が上がるごとに自信が薄れていくという現象は、予想していなかったものです。ただ、これは決して自信が全くなくなったというわけではありません。むしろ、「負の方向の自信」が強まっていることに気づいたのです。
正の自信と負の自信
ここで、自信には2種類あると自分の中で整理できるようになりました。ひとつは「正方向の自信」、つまり、業績がどんどん上向いていく自信です。例えば「今月は10台以上売れるかもしれない!」というプラスの予感を伴う自信です。もうひとつは「負の方向の自信」、つまり「どれだけ調子が悪くても、月に0台は絶対にないだろう」というような、最悪の事態を避けられるという安心感です。
入社したばかりの頃は、正の自信が大きく、負の自信はほとんどありませんでした。あの頃は、純粋に「もっと売れる」という未来を信じて走っていました。実績がまだ少なかったため、すべてが未知数であり、期待と希望で満ちていました。しかし、年を重ね実績を積むにつれ、正の自信が徐々に減少し、「毎月10台以上売るのは簡単ではない」という現実が見えてくるようになりました。
その一方で、負の自信は大幅に増えました。「どれだけサボっても、どれだけ調子が悪くても、月に1台も売れないことはないだろう」という確信です。この負の自信が増えたおかげで、恐れや不安に押しつぶされることなく、どんな状況でも一定の成果を出す自分に対しての安心感が生まれました。
自信は変わり続けるもの
営業の世界で成功を積み重ねる中で、トップセールスになることで得られると思っていた「圧倒的な自信」は、実際には異なる形で現れました。昔は、成功すればするほど自信がどんどん強まると信じていましたが、実際はその逆で、成功すればするほど「もっとできるのではないか?」という疑念が強まりました。正の自信は減っていく一方、負の自信、つまり「最悪の事態は避けられる」という安心感が強まったのです。
この経験から学んだことは、自信というものは常に変わり続けるものであり、一面的なものではないということです。若い頃の勢いと楽観的な自信は、経験を積むことで現実的なものへと変わり、時にはそれが恐怖や不安と共存することもあるでしょう。しかし、その過程で得られる「負の自信」は、どんな状況でも自分を支える強力な武器となります。
結論
自信は、成功の結果として自然に手に入るものではなく、むしろ経験の中で得られる安心感や失敗を避ける術から生まれることが多いと感じます。営業の世界で成績を上げ続けることは、決して簡単なことではありません。正の自信が減少していく中でも、負の自信を育てることで、どんな困難にも対応できる強さを持つことができるようになります。
これからも営業という激しい競争の中で、正と負の自信をうまくバランスを取りながら、自分なりの成長を続けていきたいと思います。
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